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伊藤 均*
日本防菌防黴学会誌, 29(8), p.533 - 540, 2001/08
世界的に食品照射が注目されている分野は食中毒対策と植物防疫である。食中毒対策として期待されているのはサルモネラ菌や病原大腸菌O157,ブドウ球菌,カンピロバクター,リステリア菌,腸炎ビブリオ菌の殺菌である。肉類や食鳥肉は食中毒性細菌の汚染が著しい食品類であり、低温照射では1.5~3kGy、凍結下では4~7kGyで殺菌される。肉類は高線量照射すると悪臭が発生するが、脱酸素下または凍結下で照射すると10kGy以上でも食味劣化が起こらない。魚貝類の場合、腸炎ビブリオ菌による食中毒が起こりやすいが、低温下で1kGy,凍結下3kGyで殺菌できる。香辛料などに汚染している耐熱性のセレウス菌,ボツリヌス菌は7~10kGyで殺菌できる。香辛料の香りや抗菌活性などの成分は50kGyでも変化しない。なお、微生物が産出する毒素は放射線に著しく耐性のため、微生物による腐敗が著しい食品は照射の対象としてはならない。
伊藤 均*
食品照射, 35(1-2), p.1 - 6, 2000/09
微生物の放射線感受性は生残菌数を測定する平板培地の種類によって異なることがある。本研究ではヒドロキシラジカル等と酸素の放射線感受性に果たす役割を解明することを目的として異なった種類のラジカル捕捉剤、異なった種類の培養基を用いて放射線感受性の機構について検討した。大腸菌S2株のD値は窒素ガス飽和に比べグリセリン添加で著しく増加したがポリエチレングリコール添加でのD値は無添加系と同じであった。また、一酸化二窒素飽和でのD値は窒素ガス飽和より若干低下する程度であった。また、これらの照射条件では平板培地の種類による差は少なかった。一方、酸素ガス飽和または窒素ガス+蟻酸添加系ではD値は小さくなり培地による感受性の差も大きく認められた。蟻酸共存下ではスーパーオキシドラジカルが発生しており、これらの結果はスーパーオキシドラジカルがDNA損傷ばかりでなく細胞膜障害に関与することを示している。
中馬 誠; 多田 幹郎*; 伊藤 均*
食品照射, 35(1-2), p.35 - 39, 2000/09
大腸菌等の放射線感受性は、その最適生育温度である30または37で測定されることが多い。しかし、放射線処理された肉類または魚介類は10以下で保存されるため、30または37で得られたデータが正確でない可能性がある。事実、鶏肉での結果では低温貯蔵で大腸菌群等の殺菌効果が予想以上に促進される傾向が認められた。本研究ではこれらの現象を明らかにする目的で大腸菌等の各種菌株について放射線感受性を検討した。その結果、各菌株とも30または40でD値が最高になり、20以下ではD値が低減する傾向が認められた。ことに10ではD値は著しく小さくなり、その傾向は菌株によって異なっていた。したがって肉類等の必要殺菌線量も低温貯蔵と組み合わせることにより20~50%低減できることを示している。
福永 栄*; 横山 英一*; 荒井 和浩*; 朝野 英一*; 千手 隆史*; 工藤 章*
JNC TJ8400 2000-030, 54 Pages, 2000/02
100%(乾燥密度1.6g/cm)のNa型ベントナイト成型体における微生物透過は、これまでの試験結果から想定されるように、微生物の移動は検知されなかった。100%(乾燥密度1.6g/cm)のCa型化ベントナイト成型体における微生物透過試験も大腸菌は導入部以外には検知されず、菌の移動は検知されなかった。強い還元性環境下(Eh=-500mV)でのベントナイトとNp、Puとの分配係数(Kd)への滅菌処理による影響は見られなかった。PuとNpは共に酸性側とアルカリ側でKd値が上がる傾向を示した。特にPuは、pH=36付近では、Kd値が100ml/g程度なのに対し、pH=13付近では、生菌条件で40万ml/g以上の値を示している。このように、非常に高いKd値を示した理由として、Puが水酸化物沈澱を形成したことが考えられる。
福永 栄*; 横山 英一*; 荒井 和浩*; 朝野 英一*; 千手 隆史*; 工藤 章*
JNC TJ8400 2000-029, 36 Pages, 2000/02
100%(乾燥密度1.6g/cm3)のNa型ベントナイト成型体における微生物透過は、これまでの試験結果から想定されるように、微生物の移動は検知されなかった。100%(乾燥密度1.6g/cm3)のCa型化ベントナイト成型体における微生物透過試験も大腸菌は導入部以外には検知されず、菌の移動は検知されなかった。強い還元性環境下(Eh=-500mV)でのベントナイトとNp、Puとの分配係数(Kd)への滅菌処理による影響は見られなかった。PuとNpは共に酸性側とアルカリ側でKd値が上がる傾向を示した。特にPuは、pH=36付近では、Kd値が100ml/g程度なのに対し、pH=13付近では、生菌条件で40万ml/g以上の値を示している。このように、非常に高いKd値を示した理由として、Puが水酸化物沈澱を形成したことが考えられる。
伊藤 均*; 鎌倉 浩之*; 関田 節子*
食品照射, 34(1-2), p.16 - 22, 1999/00
近年、生薬等の衛生基準がきびしくなってきており、なんらかの殺菌処理が必要になってきている。しかし、生薬を酸化エチレン等の薬剤処理すれば毒性物質の残留が問題になり、蒸気殺菌の場合には薬用成分の低減が問題になる。生薬31試料中の好気性細菌数は1g当たり210~110個あり、大腸菌群は710~410個検出された。また、生薬中の大腸菌群には腸内由来と思われる菌も検出され、好気性細菌群はBacillus以外に土壌由来の大腸菌の仲間も多く含まれていた。一般糸状菌の汚染菌数は1g当たり610~210個ありAspergillus niger群やA.Flavus群も多く検出された。微生物汚染の著しい生薬・ショウマでは14kGy照射しても好気性細菌は710個生残しており、大腸菌群のKlebsiellaが210個生残していた。しかし、多くの生薬は8~10kGyで検出限界以下に殺菌された。なお、14kGy以上の主要生残菌はAcinetobacterである。
伊藤 均
原子力eye, 44(8), p.60 - 63, 1998/08
わが国では食品照射は半分忘れられた状態になっているが、欧米諸国では実用化が着実に進展している。世界的に食品照射の実用化が進んでいる背景には照射食品の安全性が証明されたことも大きく関係している。WHOは1980年に10kGyまでの照射食品の安全性を宣言したが、さらに1997年には10kGyの上限を撤廃し、病人食を対象とした75kGyの滅菌線量でも安全性に問題はないと宣言した。照射食品の規格基準はFAO・WHO合同食品規格委員会で1983年に採択されており、加盟各国に国内法規への採用を強く勧告している。食品照射で注目されているのは食品由来の病気を防止するための衛生化対策である。米国は病原大腸菌対策を目的とした牛肉等の照射を許可し、ひき肉等の照射を義務付けようとしている。検疫で広く使用されている臭化メチルの代替法としても放射線処理が注目されており、米国等多くの国で実用化しようとしている。
伊藤 均
月刊フードケミカル, p.23 - 27, 1998/06
食品由来の病気がわが国でも急増しており、ことにサルモネラ菌や病原大腸菌O157による病気が問題になっている。これらの病原菌は食肉由来のものが多く、単に衛生管理をきびしくしても汚染を完全に防止することは困難である。電子線は消費者へのイメージが良く、人口密集地にも設置でき、処理コストも線より低いという利点がある。食肉の殺菌の場合、透過力の点からリニアック型の電子加速器が適当と思われ、しかも装置も小型化できると思われる。食肉中のO157の殺菌線量は常温下で1.5~3kGyであり、凍結下では3~7kGyである。フランスでは年間約1万トンの鶏肉が電子線殺菌されており、オランダ、米国等でも実用化されている。米国ではO157対策を目的とした牛肉ひき肉の放射線殺菌が義務付けられる可能性があり、その場合には我が国にも大きな影響が及ぶと思われる。
伊藤 均; Harsojo*
食品照射, 33(1-2), p.29 - 32, 1998/00
病原大腸菌O157:H7は数年前に米国で大規模な食中毒事件を引き起こし、その後、ヨーロッパやわが国に拡散した。病原大腸菌O157も肉製品を介して食中毒を起す可能性があり、放射線処理による衛生化により食中毒を低減できる可能性がある。本研究で牛肉、鶏肉、豚肉等より病原大腸菌の分離を試みたところ、O157:H7と同じ血清反応を示す大腸菌が牛肉、鶏肉、牛肥から各1株分離された。病原大腸菌O157標準株の0.067M燐酸緩衝液中での放射線感受性は一般大腸菌と大差がなく、D値は0.12kGyであった。一方、牛肉及び鶏肉分離株のD値は0.06kGyであり、牛肥分離株は0.20kGyと分離株により著しく値が変動した。次に牛肉中での標準株の殺菌効果を調べたところ、室温照射でのD値は0.26kGyとなり、凍結下で0.46kGyになった。従って、室温照射での殺菌線量は1~1.5kGyであり、凍結下では2~3kGyで十分である。
伊藤 均
食品照射, 33(1-2), p.51 - 55, 1998/00
食品の衛生管理、流通システムは昔に比べ著しく改善されているにもかかわらず、世界的に食中毒の件数は増大している。わが国でも食中毒は増大する傾向にあり、伝統的に最も多かった腸炎ビブリオ菌による食中毒がサルモネラ菌に取って代わり、病原大腸菌による食中毒も問題になっている。多くの食中毒はサルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、病原大腸菌、カンピロバクター、ブドウ球菌によって引き起こされており、室温での殺菌線量は1~3kGyで十分である。また、冷凍食品の状態でも2~5kGyで殺菌できる。カビ毒を産生する糸状態の場合も3~5kGyで増殖を抑制できる。
伊藤 均
食品機械装置, 34, p.61 - 67, 1997/09
食品を放射線で処理して殺菌、殺虫、発芽防止など貯蔵期間の延長または衛生化する技術を食品照射と呼んでいる。放射線も紫外線も生物に対する作用は基本的に同じであるが、放射線はフリーラジカルの作用でDNAの切断を引き起こす。照射食品の安全性及び栄養適性については世界各国で40年以上にわたって研究されてきており、世界保健機関は10kGyまでの照射食品の安全宣言を行っており、近く70kGyまでの安全宣言を行う予定である。商業用照射施設はコバルト-60ガンマ線照射装置と電子線及びX線照射用の電子加速器が用いられている。食品照射許可国は40ヵ国になっており、許可品目は100種以上に及んでいる。世界各国で検疫処理用に用いられている臭化メチルが2010年に使用禁止になる予定であり、代替処理法として食品照射が有望視されている。また、病原大腸菌O157対策としても食品照射の応用が期待される。
原田 和樹*; 帯屋 有里乃*; 中野 立央*; 小林 泰彦; 渡辺 宏; 岡市 協生*; 大西 武雄*; 向井 千秋*; 長岡 俊治*
Oncology Reports, 4(4), p.691 - 695, 1997/07
1994年7月にスペースシャトル・コロンビアを用いて実施された第2次国際微小重力実験室(IML-2)において、大腸菌の様々なDNA修復欠損変異株(lexA,recA,urrAなど11種類)の乾燥菌体と、突然変異を検出し易い「ホット・スポット」を有するプラスミドpZ189を、宇宙線飛跡検出器CR-39でサンドイッチした試料を搭載した。飛行後の大腸菌の生存率とプラスミドpZ189上のsupF遺伝子における突然変異誘発頻度を測定し、地上対照実験試料と比較したところ、生存率、突然変異誘発頻度のいずれにおいても、シャトル搭載試料と地上対照実験試料との間で有意の差は見られなかった。すなわち、宇宙で宇宙線による発ガンリスクが高くなることを示唆する結果は得られなかった。
伊藤 均
月刊フードケミカル, p.75 - 80, 1997/03
食品への放射線処理の必要性は益々強まっている。食品照射の実用化が最も進んでいるのは香辛料であり、ヨーロッパ全体で年間3~4万トン殺菌処理されており、米国で3万トン、中国で1万トン処理されている。香辛料は耐熱性の有芽胞細菌で1g当たり10~10個汚染されており、糸状菌により変敗しやすい。必要殺菌線量は7~10kGyであり、香気性成分や抗酸化性成分、抗菌性成分は50kGy照射しても変化しない。肉類や魚介類等の生鮮食品の場合には食中毒菌の汚染が問題である。多くの食中毒性細菌は少ない量の放射線で殺菌可能である。特に病原大腸菌O157は他の食中毒菌より少ない線量で殺菌可能であり、10C以下の低温貯蔵と組み合わせれば1kGyでも食中毒の防止が可能である。
前沢 博*; 古沢 佳也*; 小林 克己*; 檜枝 光太郎*; 鈴木 雅雄*; 宇佐美 徳子*; 横谷 明徳; 母里 知之*
Acta Oncologica, 35(7), p.889 - 894, 1997/01
被引用回数:7 パーセンタイル:22.9(Oncology)シンクロトロン放射を単色光源として用い、大腸菌の野性株及び放射線感受性株に対して、リンK殻光吸収による致死効果を測定し、オージェ電子による増感作用を定量した。照射実験は、高エネルギー物理学研究所・フォトンファクトリーのBL-27で行った。リンK殻吸収端付近に現れるDNAの共鳴ピーク波長及びその前後のエネルギーを照射に用いた。いずれの株の場合も、リンの共鳴により致死効率の増感が観測された。それぞれの株の致死効率から、Auger電子あるいは光電子が、DNA周囲の水分子とイオン化しさらにこれら励起水分子がDNAを攻撃することが推測された。リンからのこれら2次電子効果を含めた最終的な標的サイズは、数nmと推定された。
N.Sermkiathipong*; S.Pongpat*; 橋本 昭司; C.Banditsing*; 伊藤 均
Biocontrol Science, 2(2), p.55 - 60, 1997/00
下水汚泥ケーキ中の大腸菌群は1g当たり110~210個検出されたが、ガンマ線により4kGyで殺菌された。高崎市の汚泥ケーキ及びタイの病院の乾燥汚泥中にはサルモネラ菌が100g当たり13~110個検出され、44種の血清型に分類された。これらのサルモネラ菌の燐酸緩衝液中でのD値は0.10~0.23kGyであり、汚泥ケーキ中での完全殺菌線量は4kGyとなった。植物病原性糸状菌の拮抗細菌としてBacillus subtilis、B.polymyxaなどの細菌が土壌または市販コンポスト種菌より分離された。さらに、放射線殺菌された下水汚泥ケーキでB.subtilisを培養したところ、24時間で菌数が最大に達し、23時間で炭酸ガス発生量が最高になった。
今村 正浩*; 赤木 清*; 田中 敬正*; 今村 正人*; 水間 長代*; 小林 泰彦; 渡辺 宏; 蜂谷 みさを*; 明石 真言*; 古澤 佳也*; et al.
J. Gen. Appl. Microbiol., 43, p.175 - 177, 1997/00
被引用回数:11 パーセンタイル:37.67(Biotechnology & Applied Microbiology)原研高崎研のTIARAのサイクロトロンからの炭素イオンビーム(LET=121keV/m)と放医研HIMACのシンクロトロンからの炭素イオンビーム(LET=80keV/m)を、生理食塩水に懸溶した大腸菌に照射し、生存率を測定した。更に、コバルト60の線(LET=0.3keV/m)及びボロン10中性子捕獲による線照射(LET=230keV/m)に対する生存率を調べ、10%生存率を与える線量の比から線を基準にRBE(生物学的効果比)を算出してLETとの関係を調べたところ、大腸菌野生株ではLET=121keV/mでRBEが1.81となり、極大を示した。しかし、大腸菌のDNA修復欠損変異株であるKY85株(recA56)ではRBEのピークは見られなかった。
松橋 信平; 久米 民和
Journal of the Science of Food and Agriculture, 73, p.237 - 241, 1997/00
被引用回数:58 パーセンタイル:88.7(Agriculture, Multidisciplinary)放射線を照射したキトサンの、大腸菌E.coli /株に対する抗菌活性の機構について研究した。粉末乾燥状態のキトサンに100kGyの照射を行うことで、抗菌活性は著しく増強され、3ppmのキトサンの添加で/株の生育は完全に抑制された。100kGy照射したキトサンでは、表面電荷は3%現象したにすぎなかった。限外ろ過膜により分子量分画した場合、分子量10~30万の画分が最も高い活性を示した。さらに、キトサンと菌体との相互作用を観察するために、蛍光物質フルオレセインを導入したキトサンを調製した。培養開始後24時間の菌体は、蛍光による観察でも確認できた。また、菌体の大きさは、キトサンの添加により著しく肥大していた。これらの結果より、キトサンにより菌体表面を覆われた大腸菌は正常な代謝・増殖が行えず、分裂できない巨大化細胞を形成すると推察された。
伊藤 均
水, 39(549), p.16 - 26, 1997/00
放射線殺菌は食品の衛生化ばかりでなく下水汚泥や下水処理後の放流水の殺菌などに応用可能である。本研究では病原大腸菌やサルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、リステリア菌など多くの食中毒菌の殺菌効果を比較すると共に鶏肉や下水汚泥ケーキの殺菌効果について検討した。その結果、病原大腸菌O157は一般の大腸菌と同じ放射線感受性を示し、サルモネラ菌やリステリア菌、ブドウ球菌より少ない線量で殺菌できることを示していた。鶏肉の結果では大腸菌群は1kGyで殺菌された。下水汚泥中では大腸菌群の殺菌線量は4kGyであった。従って、病原大腸菌も鶏肉などの食品中では1kGyで殺菌可能であり、他の食中毒菌類は大腸菌に比べ汚染数は非常に少ないため、1kGyで十分殺菌されると思われる。寄生虫も1kGyでは完全に殺減されると報告されており、10C以下の低温貯蔵と組み合せれば、食品や放流水の衛生化が十分可能である。
伊藤 均
ヒューマンサイエンス, 0(11), p.25 - 27, 1996/11
海外との交流がさかんになるにつれ、従来なかった病原菌による食中毒も多発するようになってきている。ことに肉類や香辛料は微生物汚染が著しく、大腸菌が多く含まれる食品も多い。加熱殺菌の場合、熱伝導度が悪いため、75Cでも殺菌効果は不十分である。放射線は透過力が強いため、食品をほぼ均一に殺菌できる。食中毒菌として問題になっている病原性大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、ブドウ状球菌、キカンピロバクターは1kGyでほぼ殺菌でき、3kGyで完全に殺菌される。ことに1kGyでは肉類や魚介類の食味に対する悪影響は全く認められず、低温下での貯蔵期間は非照射の1日に対し、6日に延長される。照射食品の安全性は国際的にも問題ないことが照明されており、技術的にも従来法に対抗できる。
伊藤 均
放射線と産業, 0(72), p.43 - 45, 1996/00
病原性大腸菌O-157は数年前にわが国に侵入したもので、わが国にとっては比較的なじみの薄い細菌の一つである。病原性大腸菌O-157は一般の大腸菌と同様に家畜の腸内に生息しているが、野ネズミなど野性動物にも拡散している可能性がある。従って、汚染される可能性のある食品は肉類、野菜など広く考える必要がある。病原性大腸菌O-157の放射線殺菌効果を原研で調べたところ、一般の大腸菌と大差がなく、約1kGyでほぼ殺菌できることが明らかになった。この線量では肉類の品質に対する悪影響は認められず、腐敗抑制効果も認められた。海外でもO-157の放射線殺菌効果の研究が行われており、原研での結果とほぼ同じ結論が出されている。